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「SPACE」で作業効率が大幅に向上

導入機材
GB Labs Space
Softron MovieRecorder 3

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朝日放送 「熱闘甲子園」従来の収録・編集システムから更に一新

今年の夏は、全国高校野球選手権大会 (夏の高校野球) と五輪の会期が重なり、スポーツ観戦ファンには嬉しい夏となったに違いない。

夏の高校野球を毎年盛り上げる中継番組に加え、開催期間中にテレビ朝日系列局で放送される、朝日放送 (ABC) とテレビ朝日の共同制作による『熱闘甲子園』では、国際的スポーツ競技に劣らない規模の仮設プロダクション環境が、ABC 本局内に組まれる。

ABC は、2014 年に本番組全般のプロダクションワークフローを従来のテープベースからファイルベースに切り替えるという、同局でも初の試みを実施した。運用効率を向上させたことで、番組自体の品質アップに貢献できたという。

ここでは、昨年から更なる進化を遂げた番組制作環境の現場をレポートする。

「使っている人たちが良いと言ってくれていることが、一番の成果」

『熱闘甲子園』では、総合 TD を担当した ABC 技術局制作技術センター村越順司氏、編集の技術面を担当した ABC 技術局制作技術センターポスプロの山村哲士氏、そして開発部門の税所洋貴氏が同番組のシステムに携わっているが、通常の業務ではあまり接点がないという。しかし、この番組では技術チームとして結集し、蓄積してきたノウハウを共有することで、社内外で評価される運用フローを生みだした。村越氏は「使っている人たちが良いと言ってくれていることが、一番の成果」と話す。

『熱闘甲子園』の番組制作環境は、ABC 内の A スタジオに設営され、中継回線を受ける部分と編集ステーション、そして番組オンセットが併設されている。スタジオサブは、A スタジオフロアを上から見下ろす位置にあり、Mac プラットフォームをベースに各システムが組まれている。

同番組の素材として、現場からカメラ 9 台分のソースが光回線で伝送され、それをマルチカム収録しながら、同時に複数台の編集端末でリアルタイムマルチカム編集可能な環境が施されている。

カメラ 9 台分のソースは、現場にある 16 台の甲子園大会中継カメラから分配された 5 ソースと本線白素材 (1)、および熱闘甲子園専用のカメラ 3 台分。中継カメラは試合中、常にプレーを追いかけているが、現地に置いた『熱闘甲子園』専用のカメラ 3 台は、プレーを追いかけるカメラと違い、番組独自の狙いのあるカメラとして、被写体を追いかけ、番組作りに非常に重要な役割を果たしている。

murakoshi san

村越順司氏

yamamura san

山村哲士氏

マルチ収録とマルチ編集を同時並行に運用

インジェストシステムは、Mac ベースの Softron 社製 MovieRecorder 3 とキャプチャー・ハードウエア M|44 を組み込んだ Mac Proを 正副合わせて 6 セット用意し、セントラルストレージである GB Labs 社製 SPACE SSD に 40Gbps のイーサーネットスイッチを介して収録する。中核に高性能なストレージとスイッチを配置することで、9 チャンネルの映像収録とマルチカム編集を同時並行に運用できる。

MovieRecorder3 2

Softron MovieRecorder 3 による 9 チャンネル同時収録

映像制作用に設計された GB Labs 社製 SPACE の NAS システムは、従来より SPACE SSD が正副 2 式の運用で冗長化されていたが、今回は 40GbE スイッチを採用し、さらに 2 系統のネットワークを活用し、冗長性、スピード、編集端末からのレスポンスを含めネットワーク帯域を大幅に強化した恩恵を受けられるようになった。

例えば、1 日 4 試合分の収録データ約4テラバイト分を SPACE SSD から HDD にコピーする所要時間は、10 ギガビットイーサネットを使っていた一昨年の 3 時間から、今年は 40 分程度と、大幅短縮することができた。

Space

GB Labs SPACE を中心とした NAS システム

全端末から収録素材に直接アクセス

編集ステーションには、収録されている 9 素材のマルチビューワーがプレビュー専用端末として 4 台設置されている。このプレビュー専用の端末では、ABC 独自開発の制作支援システムで付けたキャプションやメタ情報を元に、映像ソースを検索、再生することができるようになっている。このシステムにより、大会期間中の全試合におけるすべての素材を瞬時に確認できるため、テープベースでは不可能な、迅速で高効率な検索を実現し、タイトなスケジュールで編集作業が要求されるダイジェスト番組の制作にファイルベース化のインパクトを与えている。

同番組の最終回エンディング用に名シーンを全収録素材から選ぶ際にも、テープベースの頃には徹夜作業をしていたこともあったが、今は徹夜することもなくなり、画作りにも時間を掛けられるようになったという。

preview

プレビュー専用端末でキャプションやメタ情報の入力が可能

番組編集のベースフォーマットは、ProRes422 (LT) である。8 つの編集ブースでは Final Cut Pro が編集システムとして設置されている。

ノンリニアに切り替えた初回から、システムの企画・構築を担当している阿吽 (あうん) 技研の矢部拓也氏によれば、今年が一番理想的な環境に仕上がっているという。9 ソース× 2 の冗長化した収録を行いながら、同時に 8 台のマルチカム編集端末、4 台の MA 端末、さらには CG 端末やファイルインジェスト端末等すべてを円滑に稼働させるためのネットワーク帯域、セントラルストレージの速度要求に応えている。

スポーツコンテンツに関しての制作は、仕上がりが良いことが最前提。放送クオリティーでも ProRes LT よりも低ビットレートのフォーマットもあるが、アルプススタンドの観客の様子を映し出すシーンを再生すると、画質劣化が視認できてしまう。

ProRes LT でマルチカムの追いかけ編集ができる環境を実現したことも、この番組の高い成果へとつながった。テープベースの編集環境では、時間が押し迫った際、様々な種類の素材をテープから探し出し、本編内に細かく入れ込むといった画作りが難しい。ノンリニア環境になり、そういった番組の画作りに時間をかけられるようになった。

加えて、編集した映像へのナレーション入れなど、音声関連にも影響が大きい。以前は MA が関わる作業になるとワークフローが複雑であったが、ファイル化により、ナレーション収録後に別の MA 端末で整音作業にすぐ取り掛かれるなど、作業の効率アップに繋がった。

final cut pro

Final Cut Pro によるファイルベースの
マルチカム追いかけ編集

今年の仮設準備期間は、開幕初日 (8月7日) まで 1 週間もなかった。通常、このような規模のファイルベース収録・編集環境を 1 週間程度で構築することは難しいが、高速 NAS ストレージである SPACE を採用したことで、複雑なネットワーク設定や特別なソフトウエア、追加のインストールが必要なかったため、随分と時間を節約することができた。

また、昨年から地方大会ダイジェスト番組「速報!甲子園への道」でも「熱闘甲子園」の編集システムの簡易版を採用しており、今年はその簡易版を増設して組み上げたため、地方大会の素材がそのまま使えるメリットも加わった。

今回のように、収録〜放送までをその日のうちに行うスポーツ報道番組の編集では、まだまだ従来通りのリニア環境が多いが、本システムのようなファイルベース・NAS システムだからこそ得られるメリットはあまりにも大きく、これまでの編集システムから一気に脱却できるインパクトと安定性は十分証明された。

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本事例は映像新聞 (平成 28 年 9 月 19 日号) に掲載された記事を元に作成しました。

映像新聞社ホームページ : http://eizoshimbun.com

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