
株式会社 インターセプター
株式会社インターセプター (東京都目黒区) は自社企画の映画作品製作ならびに、映画・PV・ライブ映像などのポストプロダクション業務を行うプロダクションだ。同社は今年1月、ポストプロダクション業務の核となる新たなストレージシステムの運用を開始した。その中で中核をなすのがGB Labs社のSpace(以下 Space) である。同社はこのシステムにより、OSやバージョンに依存しないストレージの共有化を実現し、ポストプロダクション業務全体にわたるプラットフォームの統合と、ワークフローの一層の効率化を目指している。
http://www.interceptor-inc.com/
- 導入機材
- GB Labs Space
OSに依存しないストレージの共有化
この新たなストレージシステム導入までの経緯について、株式会社インターセプター映像制作部部長の田巻源太氏は「一昨年まで、社内のシステムはそれぞれのMacに4Gbpsのファイバーチャネル (以下FC) のストレージがDAS (ダイレクトアタッチドストレージ) として接続されていたのですが、これらのリースアップとスタジオの移転を機に、新たなシステムを導入しようということで検討を始めたのがきっかけです。」
「検討を進める中で、ストレージの共有化は優先課題でした。このストレージには、映像系だけでなく、MAなどとも共有を行いたいと考えていました。しかし、FC接続のSAN (ストレージエリアネットワーク) は高額なだけでなく、Mac、WindowsなどのさまざまなOSと、さらに、各々のアプリケーションやSANのクライアントソフトウェアが動作保証しているOSのバージョン、さらにそれらのバージョンアップ時の移行などを考慮すると、あまりに制約を受けるため、他のソリューションを模索していました」と語る。
同社のポストプロダクション環境について同氏は「それぞれMacProを用いた、編集兼MA室が1室、楽器収録も行える広めのナレーションブースと編集やMAの仕込み部屋を兼ねた、多目的室とも言える編集室1室の計2室で運用を行っています。また、自社企画作品の作業や受託作業におけるオフライン編集や合成等の作業はスタッフルームでも数台で作業が行えるようになっており、WindowsやLinuxのクライアントも接続しています」という。

インター
業務全体のプラットフォーム統合
この新たなストレージシステムとしてSpaceを選んだ理由について、同氏は「ストレージの共有化を念頭において検討した結果、一昨年前の移転時にFC接 続のDASから、iSCSIベースのIP-SANストレージへと移行しました。しかし、当初より抱えていた各々のアプリケーションとの互換性の問題などが解決に至らず、そんな中出会ったのが、Spaceでした。Spaceは、FC-SANだけでなくIP-SANでも必要だった、クライアン トPCごとに必要となるライセンスやそれに伴う費用がNASゆえに不要でした。また、NASであるため、OSの種類やバージョンに関わらず接続でき、共有 ストレージとの接続方式がアプリケーションやクライアントPCの制約とはならないことが決め手となりました」と述べた。
さらに、Spaceを実際に運用した感想として同氏は「スピードこそFCに及びませんが、FireWire800よりも速い転送速度を保つため、実用上は DASと比べても何ら遜色はありません。作業は専らProRes422 HQ コーデックのQuickTimeファイルを中心に運用していますが、Spaceでは、通常のNASでは困難な、素材やプロジェクト自体をSpace上に置いたままでの編集が可能です。同時に全クライアントで作業しても全くストレスはありません。そういった意味では、FCストレージと比べて生産性は全く落ちていません」と語った。

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効率的なポストプロ環境の構築
また、コストについても同氏は「SANと違って、クライアントにライセンスが要らないだけでなく、SpaceにGbEのポートが多くありますので、現状は各クライアントからスイッチなどを介さずに直接Spaceに接続しています。そのため、SANでは必要になる高額なFCスイッチどころか、イーサネットスイッチまでもが不要でした。オペレーションも簡単で、各PCで設定して接続するだけですので、管理コストも限りなくゼロです。運用開始してから、ハードウェア的なトラブルもなく、単体だけでなくトータルコストで見ても大変リーズナブルです」という。

加えて、Spaceの導入を振り返り、同氏は「ディレクターさんなどのお客様が持ち込まれるPCを直接接続できるようになり、USBやFireWireのHDDなどを介して受け渡す必要がなくなりました。時々、外部オペレーターさんがお越しになって作業する際にも、PCにインストールされているプラグインの差異などで再作業できない部分が出たりすることがありますが、そういった場面で持ち込みPCとの協調作業も可能となり、お客様には広く喜ばれています。 私たちに至っては、もはや、Spaceのない環境に戻ることは想像すらできません」と締めくくった。
SAN, NAS, DAS それぞれの違い
NAS (ナス、Network Access Storage) は、複数のPCから同時にアクセスできる共有ストレージの一種。いわゆるLANを介して接続する。今回のSpaceでは 1Gbit (125MB/秒) の通信速度を持つ、GbE (ジービーイー、Gigabit Ethernet) を標準で4ポート備え、それらを1束として扱うことで最高4Gbps (500MB/秒) の通信速度に対応。10Gbps (1250MB/秒) の通信速度を持つ10GbE (テンジービーイー) にもオプションで対応。PC内蔵HDDやUSB、FireWireなど、PCに直結されるストレー ジはDAS (ダス、Direct Attached Storage) と呼ばれて区別されている。

映像制作用としてはSAN (サン、Storage Area Network) がハイエンドユースの共有ストレージとして広く普及しているが、この場合は、データ自体は一般的にファイバーチャネル (以下FC) と呼ばれる専用のインターフェースを介して転送される。NASではハードウェア的にはLANケーブルの接続のみで済み、SANでは必要となるメタデータコントローラーというサーバーや、FCスイッチと呼ばれる、電話で言えば交換機にあたるような機器、クライアントPC側の専用のソフトウェアが不要である。
FCに代わりLANで接続できる規格iSCSI (アイスカジー) を利用したIP-SAN (アイピーサン) もあるが、メタデータコントローラーやクライアントPC側の専用のソフトウェアがSAN同様に必要。NASは一般的に、転送方式の通信手順の構造上の違いがボトルネックとなり、SANに比べ、スピードの安定性や俊敏性で不利と言われる。今回のSpaceは、NASでありながら、独自の技術により、映像制作用にこれを最適化。SANに迫る安定したパフォーマンスを持ち、FCインターフェースを増設できないノートPCやコンパクトPCでも、SANに迫るパフォーマンスを享受できるのが特徴。